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作品・サンプルの輸送と通関 — ATAカルネという仕組み

展示会や個展で最も多い想定外の出費が、通関で発生します。原因のほとんどは一点、「持ち帰るのか、売るのか」を先に決めていないことです。この分岐で手続きも費用もまったく変わります。

最初の分岐 — 持ち帰るか、売るか

持ち帰る場合:一時輸入(ATAカルネ)

ATAカルネは、展示会や見本市のために一時的に持ち込む物品について、関税と輸入VATを免除する国際的な仕組みです。日本では日本商工会議所が発給しています。

使えるのは、展示会用の物品、商品見本、職業用具など。必ず同じ状態で持ち帰ることが条件で、現地で売ることはできません。

  • 利点 — 関税と輸入VATがかからない。複数国を回れる(欧州各国とも協定あり)
  • 手続き — 発給手数料と担保金が必要。品目ごとに詳細なリスト(一般リスト)を作成
  • 注意 — 出国時・入国時に税関で確認印をもらう必要があり、これを忘れると担保金が返らないことがあります

売る場合:正式輸入

現地で販売する物品は、正式輸入となり関税とVAT(英国は20%)が発生します。輸入者としての手続きも必要です。

作家個人が輸入者になることも可能ですが、EORI番号の取得など事前手続きがあります。ギャラリーや展示会主催者が輸入者になってくれる場合もあるため、事前に確認する価値があります。

なお、展示ではなく継続的に販売する段階に入ると、輸入者登録や現地での税務の扱いがさらに関わってきます。その先の実務は越境ECの始め方(Japan The Best)にまとめてあります。展示から販売へ進む予定があるなら、先に読んでおくと設計が変わります。

迷ったとき

「基本は持ち帰るが、売れたら売りたい」というのが最も多いケースです。この場合、ATAカルネで持ち込み、売れた分だけ現地で正式輸入に切り替えるという手続きが可能な場合があります。ただし手続きが煩雑になるため、想定販売点数が多いなら最初から正式輸入にしたほうが簡単です。

費用の内訳

項目備考
国際輸送費航空/海上。重量と容積の大きいほうで課金
梱包・木枠陶磁器やガラスは専用梱包が必要。軽視すると破損
ATAカルネ発給手数料+担保金一時輸入の場合
関税+輸入VAT正式輸入の場合。英国VATは20%
通関手数料通関業者に依頼する場合
現地配送空港から会場まで
保険輸送中と展示中の両方。別建て
返送費往路と同額程度を見込む

返送費を予算に入れ忘れるのが最も多い失敗です。往復で見積もってください。

梱包について

国際輸送の扱いは、日本国内の宅配便とは前提が違います。投げられる、積み重ねられる、温度と湿度が変わると考えて梱包してください。

  • 陶磁器・ガラス — 個別に緩衝材で包み、箱の中で動かないよう固定。木枠を検討
  • 木工・漆 — 湿度変化に弱いため、密閉と緩衝の両方
  • 染織 — 折り目がつかないよう芯に巻く
  • 絵画 — 木枠+角当て。ガラス入りは輸送中に割れるとキャンバスを傷つけるため、アクリルへの交換を検討

再利用できる梱包にしてください。返送時に同じ箱が使えないと、現地で調達することになり、費用も時間もかかります。

保険

輸送保険と展示保険は別物です。会場によっては賠償責任保険(Public Liability Insurance)の加入が契約条件になっていることがあり、これは作品の保険とはさらに別です。

申告価額は、販売価格ではなく再制作費用を基準にするのが一般的です。過大申告は保険料を上げるだけで、支払いの根拠にはなりません。

スケジュール

航空便で日本から英国まで、通関を含めて1〜2週間を見ておくと無理がありません。海上便は5〜8週間。ATAカルネの発給にも数日〜1週間かかります。

会期直前の到着は避けてください。税関で止まったときにリカバリーができません。会期の2週間前には現地に着いているのが安全な設計です。

輸送と通関の手配

一時輸入か正式輸入かの判断、ATAカルネの準備、梱包の設計、輸送業者の手配、保険の付保、現地での受取と搬入まで対応します。この判断だけのご相談も歓迎します。

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よくある質問

この分野で実際によくいただく質問です。

ATAカルネとは何ですか?

展示会や見本市のために一時的に海外へ持ち込む物品について、関税と輸入VATを免除する国際的な仕組みです。日本では日本商工会議所が発給しています。必ず同じ状態で持ち帰ることが条件で、現地で販売することはできません。欧州各国とも協定があるため、複数国を回る場合にも使えます。

展示した作品を現地で売る場合はどうなりますか?

正式輸入となり、関税と英国VAT(20%)が発生します。輸入者としての手続きも必要で、EORI番号の取得などの事前手続きがあります。ギャラリーや展示会主催者が輸入者になってくれる場合もあるため、事前に確認する価値があります。

持ち帰るか売るか決めていない場合は?

ATAカルネで持ち込み、売れた分だけ現地で正式輸入に切り替える手続きが可能な場合があります。ただし手続きが煩雑になるため、想定販売点数が多いなら最初から正式輸入にしたほうが簡単です。いずれにせよ企画段階で方針を決めておく必要があります。

輸送にはどのくらい時間がかかりますか?

航空便で日本から英国まで、通関を含めて1〜2週間が目安です。海上便は5〜8週間かかります。ATAカルネの発給にも数日から1週間かかります。会期直前の到着は税関で止まったときにリカバリーできないため、会期の2週間前には現地に着いている設計が安全です。

保険はどう考えればよいですか?

輸送保険と展示保険は別物で、さらに会場によっては賠償責任保険(Public Liability Insurance)の加入が契約条件になっていることがあります。申告価額は販売価格ではなく再制作費用を基準にするのが一般的で、過大申告は保険料を上げるだけで支払いの根拠にはなりません。